デザインや印刷を外注する際、必要最低限の原稿(テキスト)や画像を準備するのは避けられない作業です。ただ、その手間の程度は外注先によって異なります。
たとえば、次の3つのケースを想定してみましょう。それぞれのケースにおける発注者の作業は次のようになります。
(1)外注するライター、デザイナー、印刷会社が別々
①どのような構成にするかを立案する
②ライターに渡すべき資料・データを準備する
③ライターと打ち合わせをする
④ライターから上がった原稿をチェックする
⑤デザイナーに渡すべき資料・データを準備する
⑥デザイナーと打ち合わせをする
⑦デザイナーから上がったデザインをチェックする
⑧進行のスケジュール管理をする
⑨校正する
⑩印刷会社を手配する
⑪印刷会社とデザイナーとの間で入稿条件を確認する
⑫印刷会社と色校や納品条件についてやりとりする
(2)原稿は自社内で作成し、デザイン事務所に印刷まで引き受けてもらう
①どのような構成にするかを立案する
②デザイナーと打ち合わせをする
③原稿を書く
④デザイン事務所に渡すべき資料・データを準備する
⑤デザイン事務所に発注する
⑥デザイン事務所から上がったデザインをチェックする
⑦(デザインに合うよう)原稿を一部修正する
⑧デザイン事務所に修正を依頼する
⑨校正・色校などを行う
(3)構成案から原稿、デザイン、印刷まで一括して編集プロダクションに依頼する
①編集プロダクションと打ち合わせをする
②編集プロダクションに渡すべき資料・データを準備する
③編集プロダクションから上がった原稿・デザインをチェックする
④編集プロダクションに修正を依頼する
⑤校正・色校などを行う
(1)のように工程ごとに外注先を分けると、発注者(貴社)の手間は増えます。しかも、(1)で最も難しいポイントは「自分が企画立案やスケジュール管理などの役割を負わなければならない」ことです。出版社や編集ブロダクションのプロ編集者が発注するのであればこの方法でも問題ありませんが、編集のプロでない人がこの方法を採用するのは、業務効率面でも品質面でもお勧めできません。
(2)はよく見受けられるケースですが、デザイン事務所の姿勢や能力に大きく左右されます。そのデザイン事務所に編集者なりディレクターがいて、企画立案やスケジュール管理などをフォローアップしてくれるのであればスムーズに進行できるでしょうが、単に「デザインと印刷だけ」を請け負う姿勢のデザイン事務所だと、全体的なフォローアップやスケジュール管理の面で不満が残るかもしれません。
(3)のケースでは発注者(貴社)が行うべき作業が最も少なくて済みます。ただ、編集プロダクションの姿勢や能力によって事情は大きく異なってきます。
もし、非常にいい編集プロダクションを見つけることができれば、その後もブレーン的な役割として協力してくれるでしょうが、あまり好ましくない編集プロダクションであれば「高いだけで使い物にならない」という結果に終わることもあります。
その点ではハイリスク・ハイリターンですので、外注先選定の際には慎重に検討しましょう。単に「見積もりが安いから」という理由だけで選ばず、一度顔合わせをした上で、「人として、プロとして。信頼できるかどうか」を推察することが望まれます。